DSトレンドセミナーレポート -Quark8-
大日本スクリーンが年に2回行う「トレンドセミナー」に参加してきましたので、セミナーレポートを。
今回は、drupaの報告セミナーもあり、午前11時から午後5時過ぎまでのボリュームセミナー。 メインはもちろんスクリーンによる技術情報だけど、AdobeやQuarkといったメーカーセミナーもあり。 とても一回の記事では書ききらないので、セッションごとに分割して書きます。
まずはQuarkから、Quark8新機能紹介。
Quark8については、すでにいろいろなブログなどで、評価されてますが、 総じて評価は辛口...というか「それInDesignと一緒じゃん!」という意見が多いですね。 いやいや、ちょっとまって。やっぱり物事を評価するのに、減点方式ばかりじゃかわいそう。 褒めてのばす、いい部分をさがしてみようじゃないですか。
まずは、新機能として紹介された項目のうち 「InDesignに同等の機能があるよねー 」 「この機能はInDesignにもないね 」 「InDesignにも同じような機能があるけど、こっちのほうが良さそう 」 「評価対象外 」 で分類してみました。
Quark8の新機能
「InDesignに同等の機能があるよねー 」
- ファイルをドラッグドロップで配置に対応(Bridgeからもドラッグドロップで配置)
- 画像のトリミング時、Boxエリア外の部分の画像が半透明で表示される
- イラストレーターネイティブファイルの配置が可能に
- ワードのネイティブデータをドロップ配置できる
- Box属性がシームレスになり、画像ボックスとして作成したものでもテキストを配置できる
- アイテムスタイル オブジェクトのスタイルを登録できる
- グリッドテキストボックス、グリッドスタイル採用。文字数行数などが表示される
- ぶら下がりをBox外に追い出しできる
- ルビが1行目に来た時、Box外に配置される
- ルビ属性で張り出しルビ設定が可能に
- 元画像からプレビューを生成(画像ファイルのもつプレビュー情報は使用しない)
「この機能はInDesignにもないね 」
- ウインドウ分割表示、16分割まで可能
- 配置している画像の解像度が表示される
- ドキュメントからFinderにドラッグドロップすることでリンクファイルをコピーできる
- ルーラー方向、左右変更できる。ルーラー原点をかえられる
- フォント置換(フォントマッピング)ルールを作って(○○フォントはフォント●●に置換、みたいな)その後そのルールを自動的に適用できる。もちろん、ルールの変更、廃棄も可能
- Webなどへの展開 タブボタンを押して、タブページでほかメディアへの展開用ファイルを作成。
- 共有コンテンツパレット 展開用ファイル内で、共有しておきたいアイテム(一カ所を変更すると他にも反映される)を管理する
- (プリフライト)ジョブジャケット 指定したタイミング(保存時、書き出し時、プリント時など)でプリフライトをバックグラウンドで実行。
「InDesignにも同じような機能があるけど、こっちのほうが良さそう 」
- フォントリスト表示がそれぞれのフォント字形で表示。Shiftキーを押すことで表示をオフできる(プレビュー状態とオフ状態どちらをデフォルトにするかは選択できる)
- 検索、置換機能の強化。オブジェクトの属性などで細かく検索できる
- ガイドにオブジェクトが吸着しレイアウトがしやすくなった。テキストボックスのセンターラインを表示でき、センターラインでオブジェクトを吸着させることもできる
- アイテムロック Box位置のロックと、コンテンツのロックが別に設定できる
- プリフライト 個別にプリフライトのルールを設定し適用する。項目を詳細に設定できそう
「評価対象外 」
- 互換性について v3、v4と同等の文字組エンジンも内部にあり、"可能な限り"体裁を保つ。下位保存はv6まで。v3、v4形式での保存はできない
- 古いファイルを開くとき、optionキーを押しながら開くと、v8のドキュメントとして(古い属性を捨てて)開く
- OS X10.4~10.5対応 Intel Mac最適化 メモリ1GB以上必須
- アップグレードについて、パッケージがなくても、シリアルとユーザー登録が確認できればOK
- サイトライセンス 複数(5台以上)の購入にはサイトライセンスが便利。サーバで起動台数を制限する
- リモートライセンス(ライセンスの外部持ち出し)チェックアウト機能(ネットワーク外でのライセンス利用)などが可能
- v4の販売終了は、7月31日
- テクニカルサポート無料
こうやって書いてみると、確かにInDesignと同じだよという機能は多いですね。 いくつかInDesignにない機能もあるけど、それほど大きな機能ではないし、InDesignより優れている!という感じではない。 すでにInDesignを使っている人からみると「なんだよしけてんなー」と感じてしまうのかもしれない。 正直私も「いまさらこんな機能を新機能です!っていわれてもな...」という感想だった。
でも。
よく考えてみてほしい。 Quark8が、ターゲットとしているのは「InDesignユーザー」ではないのだ。
Quark8のターゲットは「未だにOS 9でQuark3.3、4.1を使っているユーザー」だ。 そして、その数は「InDesignユーザー」よりも多い。圧倒的に。 だから比較するアプリケーションも「InDesign」ではなく「Quark4.1」 「Quark3.3、4.1ユーザー」の目で見ると、Quark8はものすごい進化に感じるのではないだろうか。「え!すごいこんなことまでできちゃうの!?」と。
実際「OS Xでも使い慣れたQuarkを使いたい」って人は意外と多いのだ。 そういう人がOS Xに移行するとき、いままでは「Quarkが使いたいけど...InDesignの方が機能も多いしこっちにするかなぁ」とInDesignを使っていたところ「QuarkもInDesignも同じことができるの?じゃあQuarkにしよう」とQuarkを選ぶんじゃないだろうか。
「手になじんだツールで使いやすい」「動作が軽くてさくさく動く」っていうのは立派なアピールポイントだ。 新機能として「誰もが考えつかなかったような、他のツールにない機能を付ける」ばかりが進化ではない(毎回それをやっているAdobeはほんとにすごいとは思うけど) 「他のツールにあって、自分にない機能を補強する」(言い方を悪くいえば、『パクリ』)だってユーザーがそれを望んでいるのならやるべきだろう。
そういう目でみるとQuark8は足りなかった機能をすべてそろえてきた。細かい部分ではInDesignより気が利いているなと思わせるところもある。まだまだ勝負はついていないと思う。
唯一、Quark8の障害になりそうなのは 「CS買ったらタダでついてくるInDesign」と「80,850円出して買わなきゃならないQuark8」ってとこかな...(それが一番でかいかも)