フォント管理2011(10.6対応)
フォント管理については、DTP Transitでたびたび取り上げてきましたが、総集編です。
パレートの法則よろしくインストールされているフォントの中で使うものは一握りです。フォント数を少なくすると、スピーディにフォントを選択できるだけでなく、OSやアプリケーションの起動時間が短くなるという効果も得られます。
フォント管理を行った最小限の状態
「システム/ライブラリ/Fonts」や「ライブラリ/fonts/」内のフォントを最小限にした状態でのIllustrator CS5のフォントメニュー
デフォルトの状態でのIllustrator CS5のフォントメニュー
フォント管理については、Extensis/ソフトウェア・トゥーが配布している『Mac OS X 環境のフォント管理活用ガイド』(PDF)が参考になります。
フォントのインストール場所
「インストールされたフォントを整理し、最小限のフォントのみ残す」前に、フォントがどこにインストールされるのかを確認しておきましょう。Mac OS Xには、いろいろな場所にフォントがインストールされています。
インストール場所 | 挙動 |
---|---|
システム/ライブラリ/Fonts | 基本的にはアンタッチャブル |
ライブラリ/Fonts | すべてのユーザーが使えるフォント Adobe CSのフォントはここにインストールされる |
ユーザー/(ユーザー名)/ライブラリ/Fonts | そのユーザーだけが使える |
ユーザー/(ユーザー名)/ライブラリ/Application Support/Adobe/Fonts | アドビのアプリだけが使える |
アプリケーション/Adobe InDesign CS5/Fonts/ | InDesignのみが使用できる |
アプリケーション/Adobe Illustrator CS5/Fonts/ | Illustratorのみが使用できる デフォルトではないので、自分で作成する |
フォント管理
フォント管理の流れ
フォント管理は、次のような流れで行います。
- インストールされたフォントを整理し、最小限のフォントのみ残す
- フォント管理ツールを使って、待避したフォントをアクティベートできるように登録
- フォント管理ツールを使って、追加のフォントをアクティベートできるように登録
「システム/ライブラリ/Fonts」内の整理
次の手順で「システム/ライブラリ/Fonts」から、次のフォントを待避します。
- 「ユーザ/共有」内に「Fonts」フォルダを作成する
- さらに、その中に「System」フォルダを作成する
- 「システム/ライブラリ/Fonts」からリストにあるフォントを「ユーザ/共有/Fonts/System」にドラッグする(複製される)
- 「システム/ライブラリ/Fonts」からリストにあるフォントを削除する
- 管理者パスワードが求められるので、入力してから[OK]ボタンをクリックする
「システム/ライブラリ/Fonts」に手を入れると、Mac OS Xが起動しなくなってしまったり、文字化けしてしまうなどの支障を来す恐れがあります。リスクを覚悟の上、慎重に行ってください。
待避するフォント
- Apple Braille Outline 6 Dot.ttf
- Apple Braille Outline 8 Dot.ttf
- Apple Braille Pinpoint 6 Dot.ttf
- Apple Braille Pinpoint 8 Dot.ttf
- Apple Braille.ttf
- Apple Gothic.ttf
- Apple Symbols.ttf
- Geeza Pro Bold.ttf
- Geeza Pro.ttf
- STHeiti Light.ttc
- Thonburi.ttf
- ThonburiBold.ttf
- 儷黑 Pro.ttf(LiHei Pro)
- .ttf(STHeitiï)
- .ttf(STHeitiï)
右のキャプチャには「Geneva.dfont」が反転していますが、これは残しましょう。
「ライブラリ/Fonts」内の整理
「ユーザ/共有/Fonts」内に「Library」フォルダを作成し、「ライブラリ/Fonts」から、次のヒラギノ8書体を除くすべてのフォントを「ユーザ/共有/Fonts/Library」に移動します。
- ヒラギノ明朝 Pro W3.otf
- ヒラギノ明朝 Pro W6.otf
- ヒラギノ丸ゴ Pro W4.otf
- ヒラギノ丸ゴ ProN W4.otf
- ヒラギノ角ゴ Pro W3.otf
- ヒラギノ角ゴ Pro W6.otf
- ヒラギノ角ゴ Std W8.otf
- ヒラギノ角ゴ StdN W8.otf
「インストールされたフォントを整理し、最小限のフォントのみ残す」方法には、「ライブラリ/Fonts」の整理には、FontExplorer Xの「Clean System Fonts Folders」を使うこともできます。
Mac OSを再起動
これで最低限のフォント環境になりました。システムを再起動し、Illustratorのフォントメニューを確認してみてください。
Illustratorのみで表示されるフォント
Illustratorの方のフォントリストには「Adobe 明體」とか「Adobe 宋体」などがリストに出てきます。これは、アプリケーションに内包されているフォントで、アプリケーションアイコンの[パッケージの内容を表示]をクリックすると、
「Required」→「Fonts」の中に入っています。
「AdobeSongStd-Light.otf」、「AdobeMyungjoStd-Medium.otf」、「AdobeMingStd-Light.otf」を削除すると[フォント]メニューからは消えますが、慎重に行ってください。
フォント管理ツール
有料のフォント管理ツールには自動アクティベート機能などがありますが、日本語環境では安定していません。
フォントの出し入れ管理のみであれば、無料のFont Explorer X 1.2.3で十分ですので、Font Explorer X 1.2.3の使い方をご紹介します。
FontExplorer Xのインストール
ダウンロードした「Font Explorer X 1.2.3」アイコンを「アプリケーション」フォルダにドラッグコピーします。
「Font Explorer X 1.2.3」アイコンをダブルクリックして初期設定を行います。[Manage font files]では、「Don't manage font files」を選択します。「Don't manage font files」以外では、フォントが複製されたり、移動してしまいます。
フォントの追加(フォント管理ツールへの登録)
待避させたフォント、そのほかのフォントを、FontExplorer Xでアクティベート(=使用可能な状態にすること)できるようにsetに登録します。 アクティベートしやすいように、あらかじめフォルダ分けしながら登録したり、プロジェクトごとにセットを作っておくとよいでしょう。
Type 1フォントの扱い
PostScript Type 1版とTrueType版のHelveticaは、「Helvetica Medium」(T1)と「Helvetica Regular」(TT)のようにフォント名が異なるだけでなく、形状も異なるためリフローの原因になります。そこで、TrueType版とType 1版のHelveticaのどちらを使うか明示的に指定を行い、第三者が制作したドキュメントでも意識的に確認作業などを行う必要があります。
Mac OS Xでは、システムフォントに「/System/Library/Fonts」内にある「Helvetica.dfont」を使っています。「dfont」はTrueTypeフォントのため、Type 1形式のHelveticaを使うには、次のアプローチがあります(Helvetica NeueやFuturaなども同様)。
フォントの置き場所 | InDesign | Illustrator | |
---|---|---|---|
A | アプリケーションと同階層の「Fonts」フォルダー | Type1のみ 認識する | Type1、TrueType 両方とも認識する |
B | /ライブラリ/Application Support/Adobe/Fonts | TrueTypeのみ 認識する | |
C | /ユーザー/(ユーザー名)/ライブラリ/Application Support/Adobe/Fonts |
Illustratorのみであれば、どのアプローチでも問題ありませんが、InDesignも一緒に使う場合には、Aの方法(「アプリケーションと同階層の「Fonts」フォルダーに入れる方法)がベストです。
A:「アプリケーションと同階層の「Fonts」フォルダー
- Illustratorでは「/Application/Adobe Illustrator CS5/」内に「Fonts」フォルダを作成し、Type1フォントを入れておく
- それぞれのアプリケーション(InDesign/Illustrator)でのみで使える
- フォント重複のアラートが出ない
- InDesignではTrueTypeのHelveticaが認識されなくなる。「環境に無いフォント」として扱われるので、古い書類などでTrueType版Helveticaを使っている場合には置き換えが必要
B:「/ライブラリ/Application Support/Adobe/Fonts」にType 1を入れる
- 全ユーザーが使える。ただし、アドビのアプリケーションのみが対象
- フォント重複のアラートが出ない
- InDesignでは
TrueTypeのType1のHelveticaが認識されない - Mac OS Xの再起動が必要
C: 「/ユーザー/(ユーザー名)/ライブラリ/Application Support/Adobe/Fonts」
- 基本的にはBと同様
- システムを再起動せず、ログオフ/ログインのみでOK
BまたはCで、フォントの挙動がおかしいときには、「AdobeFnt13.lst」というファイルを捨てて再起動します。フォントキャッシュが新たに作成されます。
その他
Mac OS Xに付属のFont Book.appではTrueType版とType 1版の混在は行えません。 ほかに、TrueType/Type1を使わず、OpenTypeフォントを使う"潔い"アプローチもあります。
追記(2011年11月9日):
本家Linotypeから「Font Explorer X 1.2.3」の配布が終了してしまったようです。検索すれば、ダウンロードできるサイトはたくさん出てきますが...