コラム:インターフェイスの旅
2月24日付けの「日刊デジタルクリエーターズ」に掲載したコラムを転載します。
インターフェイスの旅(6)数値入力
今回は、値の入力、特に数値入力を取り上げたい。
▲と▼のセットで値を増減したり、プルダウンメニューから選択したりのほか、入力ボックスの中に数値を入れるだけと思いきや、よくよくみると百花繚乱だ。
●項目名をクリックして入力ボックスを反転
数値を入力する前に必要なのが、直前に入っている値を削除するという作業だ。
(1)数値をドラッグして選択する
(2)クリックしてカーソルをおき、deleteキーなどで削除する
と、このあたりの方法が一般的だが、なかなか面倒な作業といえる。
IllustratorやPhotoshopでは、入力ボックスに対応する項目名をクリックすると、入力ボックス内がすべて反転する。数値を入力してからreturn/Enterキー、またはtabキーで次の入力ボックスに移動しながら確定する仕様になっている。
インチ系のポイントとメートル系のミリメートルの組み合わせなど、割り切れない単位系が混在する場合、電卓で計算せずに単位付きで入力することで、限りなく誤差を押さえることができる。入力ボックスでは、小数点以下2位(または3位)までしか表示されなくても、内部的にもっと深いところで計算しているためだ。
単位をつけて換算できるほか、「12pt×3」(=36pt)、「50pt+25%」(=62.5pt)のような簡単な四則演算も行える。単位換算や四則演算をする場合には、入力ボックスに不適切な文字列があるとエラーになりやすい。そういう意味でも「項目名をクリックして入力ボックスを反転」は理にかなっている。
●Illustrator CS2でインターフェイスの一貫性が失われる
Illustratorのパレットの数は、すべて並べると楽勝で画面をすべて覆ってしまうほどだ。この状況を打破すべく、Illustrator CS2では[コントロールパレット]が採用されている。デフォルトでは画面上部に長いパレットが表示されており、選択しているオブジェクトや文字によって、設定できる項目が変化するというものだ。
さて、このコントロールパレット内の項目名の下に点線が表示されている場合、対応する入力ボックスが反転するのではなく、項目名が属するパレットが開くという仕様になってしまった。
コントロールパレットに表示しきれないパレットをスピーディに呼び出すという利点はあるものの、「項目名をクリックして入力ボックスを反転」という10年以上にわたる一貫性を自ら放棄してしまったことはとても残念だ。
ちなみに、これに似たものをPhotoshopでは「オプションバー」、InDesignでは同じ「コントロールパレット」だが、それぞれ似て非なるふるまいをする。
●Photoshopは一歩先を行く
2005年1月リリースのAdobe CSから、Illustrator、Photoshop、InDesignと足並み揃えてリリースされているが、実際、細かいところで、独自の仕様が異なる。特に、インターフェイスという点では、Photoshopは少し先を行っている。
Photoshopでは、CS以降、項目名にマウスポインタをあてると、指さしアイコンに←→がついた形状に変わり、ドラッグすると数値が変わる「スクラブスライダ」を実装している。
ちなみに、「スクラブスライダ」はAfter Effectsで最初に実装された機能。
shiftキーを押しながらだと10ずつ、commandキー(After Effectsではoptionキー、commandキーは0.1ずつ)を押しながらだと1ずつ増減する。以前、この連載で2バイト(全角)で入力すると、数字として受け付けられないことについて触れた。入力する必要がなければ、この問題からも解放される。
●スライダ
0〜100%で値を設定するときには、ミキサー(音響関連)のフェーダーな「スライダ」がよく使われる。従来は上下に値を増減したが、最近はもっぱら横方向になっている。縦の方が直感的だし、実際、マウスの操作も省力化できる。
Photoshopのレイヤーの不透明度の設定では、テンキーの1〜9の数字キーを押すと、10〜90%、0は100%になる。古くからある重宝する機能だ。
●まとめ
ちまちまとあら探しのような検証となったが、自分が年を取ったせいか、パレット内で小さな▲/▼に正確にマウスポインタを合わせたり、マウスクリックが多い作業にちょっと疲れてきた。どんどん機能は追加されていくのに、基本的で、かつ、実際、多くの時間を費やしている数値入力といった作業が軽視されているように思えてならない。
ご存じの通り、マクロメディア製品が次期バージョンではアドビブランドでリリースされる。より利便性の高いインターフェイスを追求しつつ、やはり、一貫性も大切にした仕上がりになることを期待したい。2バイトの数値入力への対応も期待したいところだ。