InDesignコンファレンスレポート -InDesignの現在-
さてInDesignコンファレンス2008、現実のセッション(笑)
InDesignコンファレンスでは、Beginner Track、Professional Track、Hands-on Trackと三つのトラックで様々なセッションが行われ、受講者はその中から自分の受けたいセッションを選んで受講する。見たいセッションに限って重なっていたりするので、受講チョイスには苦心する。
今回私が受講したのは
- InDesign の勉強部屋(森 裕司氏)
- ハンズオン中上級 InDesign スペシャルティップス編 (森 裕司氏 市川 せうぞー氏)
- 印刷会社のPDF ワークフローとInDesign(郡司 秀明氏 久富 隆洋氏 大里 浩二氏)
- InDesign、正規表現の世界(市川 せうぞー氏)
- ビジネスプレゼンテーションとInDesign(ガー・レイノルズ氏)
- InDesign からのWeb 展開の理想と現実(鷹野 雅弘氏)
- 驚愕のInDesign 使い(祖父江 慎氏)
の7つ。
InDesignの現実
「未来」の話だった「最新情報」セッションと変わって、こちらのセッション内容はどれも現実味あふれるものばかり(笑)
私が実戦系のセッションばかりを選んで受講したせいもあるけど、「今のInDesignをどうやって使いこなすか」といった話が中心。
ああ、なんだかモデルルームへ行ってピカピカのキッチンとすごく多機能で便利そうだけど使いこなせるかしら?な電化製品のデモストレーションをたっぷり見せられた後、家に帰って古いけど使い込まれたキッチンに座って「プロが教える料理のこつ」みたいなテレビ番組をみてるような感覚。
それぞれのセッションの内容と感想(細かく書くと長くなるので簡単に)
InDesign の勉強部屋(森 裕司氏)
「スタイルを極める」というテーマで、InDesignにある各種スタイル設定についてのTips紹介。 段落スタイル、先頭文字スタイル、オブジェクトスタイル、表スタイル、セルスタイルとそれぞれのスタイルでのTips。
知っている機能でも、自分の使わない使い方をしているところなどがあって、勉強になりました。
ハンズオン中上級 InDesign10問20答 スペシャルティップス編 (森 裕司氏 市川 せうぞー氏)
InDesignでの様々な問題をお二人それぞれのやり方で解決する。裕司氏はInDesignの機能を使って、せうぞー氏はスクリプトなどを駆使してプログラマブルに...という方向性。
ハンズオンセミナーだったので、受講者も各自のマシンで作業してみるという方式だったのだけど、時間が足りず用意された10問までたどり着けませんでした。ただ、配布された資料にやるべき内容とやり方がすべて載っているので、持ち帰った資料を見ながら自習するということで(笑) 私もやってみましたが、結構つかったことのない機能がでてきて(テキスト変数とか、箇条書きリストとか)自分が普段使わない機能を使ってみる、いい機会になりました。
ちなみに用意されたお題は以下の10問
- 表の設定を変えたい(セルスタイルのデフォルトを変える、指定できない高さを指定する)
- 大量の名刺作成を効率よく行うには(データ結合機能、XMLによる流し込み)
- 繰り返しでてくる単語にルビをふる/ルビを一括削除する(検索と置換で書式設定ごと置換、javascriptで一括削除)
- 商品スペックに自動でスタイルをつけたい(正規表現検索で一括検索置換、javascriptで一括置換)
- 縦組の文章で、二桁数字の字形を半角に変更したい(正規表現検索置換、javascriptで細かい指定も可能なプログラムで変更)
- テキスト変数をもっと活躍したい(あらかじめ用意された変数を使って柱などを制作する、テキスト変数を自分で定義する)
- 範囲内ペーストで、簡単合成と角丸の表作成(写真を部分的に全面にペーストして合成、四角の表を角丸の表にペーストして角丸の表に)
- 丸囲み文字、文中の罫巻き文字の作成(ルビに○を入れ文字からのオフセットで調整、javascriptのツールを使用)
- 箇条書きリストをもっと利用する(自動番号を設定し段落スタイル登録で簡単に、)
- 行末のスペースを吸収させる(全角スペースをぶらさがり登録する、正規表現検索置換で等幅全角字形に変換)
しかし、ハンズオンって大変なんだな...と。 ひとつひとつの内容はそんなに難しいものじゃないんだけど、うっかり説明を聞き逃したりするとどんどんすすんじゃって、取り残されちゃう...。
印刷会社のPDF ワークフローとInDesign(郡司 秀明氏 久富 隆洋氏 大里 浩二氏)
まず制作側の話として大里氏より
最新のアプリケーションで作成したデータを印刷会社に入稿しようとすると、フォント、画像、カラーモードなどいろいろと規定が多く、また入稿対応できないと受け付けてもらえないことが多い。 本当はちゃんと出力できるのに印刷会社がテストしておらず、出力できないという場面がある 最新アプリケーションを使った制作環境は、効率がよく、大変な雑誌の編集作業も少人数、低スペックマシンで短期間にこなせるほどだ。
後の責任は制作側でもつから、出力はPDF出力に対応してほしい。といった話がありました。
その後、印刷会社代表として、久富氏より、InDesignの入稿が増えているという話と、InDesignでのトラブル事例紹介(singを読み込みが終わる前に出力すると化けるという話とか)
...といった話。
...なんか、聞いてる間中、印刷会社としてすごい反論したくてたまらなかった...というか...。 今時PDF入稿や新しいアプリケーションの入稿を「テストしてないから」と断っている印刷会社ってそんなにいるんだろうか...。私がしらないだけで結構あるの?
あと、「後の責任は制作側でもつからPDFをだしてくれ」って、ここが一番重要だとおもうけどな。「責任もたないけどPDFだして!」とか「作り方よく分からないけどPDF作るからだして!」とかが多いんだよ...だから印刷会社も恐ろしくて「PDF全部OKです」とはいえないんだろう。
このセッション、次の時間枠にも同じようなタイトルのセッションが予定されていて、セッション内で「次のセッションもこのセッションを聞いていることを前提とした話をしますんで」みたいな説明をされていたのだけど、私は他のセッションを受けたので次は受講できず。もしかしてそこまでうければもうちょっと深い話が聞けたのかもしれません。
InDesign、正規表現の世界(市川 せうぞー氏)
正規表現を使っての検索置換についての詳細説明。
実際の例題を正規表現検索をつかって処理をみせながら、正規表現についての説明。
一緒に配られた資料が秀逸。後半にInDesignCS3の正規表現一覧表がついていて、これをもらうためだけでも受講する意義がある!というセッションでした。
あ、あとせうぞー氏の頭(この頭をつくるだけで今回の出演料は全部とんだという...)も見所でした。
ビジネスプレゼンテーションとInDesign(ガー・レイノルズ氏)
ガー氏による「よいプレゼンテーションとは何か」という講演。
プレゼンテーションとはストーリーテリングである。イメージ、ナレーション、音楽。 いいプレゼンとは、いい駅弁と同じである。たくさんの具(内容)があるが、それぞれに目的があり、きれいにまとめてあり、よい時間がつかえる。 ひとつのスライドに多すぎる情報が入っているのはよくない。抑制、シンプル、ナチュラルが必要。
えっとInDesignあんまり関係なかった(笑)いや、一応ガー氏が、本を出版するのにInDesignを使って簡単にできたという話ははさんでありましたが。主にプレゼンテーションについての話。でも、内容は面白かった。
私もたま〜にですが、社内で人前で話すことがあるので、参考になりました。ガー氏のセッションを受けたせいで、その後のセッションは「よいプレゼンとは...」と考えながら見るという嫌な客になってしまいました。
InDesign からのWeb 展開の理想と現実(鷹野 雅弘氏)
「よいプレゼンかどうか」という判定をすれば、確実に「よいプレゼン」と評価されるであろう鷹野氏のセッション。
この方のプレゼンは一言でいうと「上手い」。
説明がわかりやすく、スライド(っていうのか?)が見やすく、しゃべりがうまい。ツールの使い方も淀みない。内容が面白い
今回のスライド資料、当日の朝、まだできてなかったという噂を聞きましたが、そんな風にはとても見えない。何回も練習してきたかのようななめらかさ。
内容はInDesignからWeb展開する理想と現実について
一言でまとめると「Adobeはデモですっごく簡単そうにInDesignからWeb展開やってるけど、実際あんなにうまくいかないよね。Adobeはデモがうまいなー」って話(笑)いや、ほんとにそういわれたんで。
InDesignからそのままWeb展開しようと思ったら、作成時点からWebに展開することを考えたデータ作りをしなければならない。また書き出されたHTMLなどは、そのまま使うってよりは修正がいる。
と、言う感じでHTML+CSS、Flashについての基本知識の説明。Flashについては、次期バージョンCS4での書き出しとFlashCS4の連携デモなどがありました。
DTP系の人でも、ある程度はWeb関連知識を身につけたほうがいい。自分でかけなくても少なくともある程度読める程度には。今後Web展開はますます必要になるからとのお話。耳がいたいです...。
ところでプレゼン中、前半ずっと虫の声が流されていたのですが、あれはなんだったのだろう?
驚愕のInDesign 使い(祖父江 慎氏)
最後のセッションは祖父江 慎氏。ある意味鷹野氏の対極にあるプレゼン(笑) この方のプレゼンは一言でいうと「上手くない」。
今回のスライド資料、セッションの直前でまだできてない(からセッション開始が遅くなるよ)という説明を聞きましたが、うん。そんな感じ(笑)
その資料も、広げた本を写真にとっただけのものだし、しかも開いたファイルの操作がわからなくて「だれかやり方がわかるひとー!」って会場に聞いちゃうし(笑)写真とってないからって、手に持った本を掲げて説明しちゃうし(見えないよ!)
でも、内容はすっっごくおもしろかったのだ。
InDesignでは合成フォントを細かく指定できる。その機能をつかって細かく細か〜〜〜〜く指定をする。
書籍のイメージにあったフォントをそうやって作る。
そのこだわりはたとえば、「、」や「。」といった句読点だけ違うフォントを使うとか、特定の文字だけちょっと長体をかけるとか、細かい細かい指定。
とにかく最終的に「こうしたい」というイメージが明確にあって、その為にとことんまでツールを使う。 そういった話を祖父江氏の朴訥とした話し方で話されて、すごくひきこまれてしまいました。
ツールが使えなくたって、話がたどたどしくったって、話す内容がすばらしければ面白いプレゼンはできる!そういうセッションでした。
...と、いっても、祖父江氏の組版に対する知識とあのキャラクターがあるからこその面白さで、ふつーの人にはまねできませんけどね(笑)