InDesignコンファレンスレポート -InDesignの未来-
7月7、8、9日に行われたInDesignコンファレンス2008東京に参加してきました。
コンファレンスは3日間にわたって行われ、初日にはInDesign CS3 vs Quark 8なんていう面白いセッションもあったらしいのですが、私の参加したのは2日目、3日目のみ。
コンファレンスの内容について基調講演などメインセッションの内容については、Macお宝鑑定団などですでに詳しいレポートがあがっているようですので、私は私なりの(主観に満ちた)レポートを。
InDesingコンファレンスで私が受講したセッションを分類すると、次の3つに分けられる。 すっっっごく未来、ちょっと未来、そして現実。
すっっっごく未来
すっっっごく未来、が語られたのは2日目の「InDesign最新情報」セッション。 米国Adobe Systems社のInDesignエバンジェリスト、ティム・コール氏によるInDesign最新情報紹介。
このセッションは、ティム氏による英語の説明を、アドビジャパンのナット・マッカリー氏が翻訳するという形で行われた。
お二人のかけあいは非常に愉快ではありましたが、肝心の翻訳についてはナット氏は「これはちょっと(訳すのがむずかしい)」といった感じでかなり省略したりしてしまったので、英語の不自由な(私のような!)参加者にとってはちょっと悲しい部分がありました。大体の内容は英語でもわかりますが、参加者はどんな細かい情報も聞きもらしたくないと思っているのでできればもうちょっと丁寧な翻訳があればよかったのに。(お前のヒヤリング能力を磨け、という話ではありますが)
ティム氏は今後のInDesignについて、InDesignを全く使ったことのないユーザーにも広がるだろうとして、バックグラウンドでInDesign Serverが動くWebベースのソリューションとしてBrandDoozieを紹介。
名刺、封筒などのテンプレートが用意され、Flashベースのユーザーインターフェイスで動かす。データはPDFまたはInDesignネイティブデータとして作成され、ダウンロードできる。実際にInDesign Serverからデータが返されるところまでデモしてみせたが、若干処理が遅く感じた。動作の遅さについては、ティム氏からも回線のせいであろうと説明があった。
おなじようにサーバを介してInDesignを使う事例紹介として、複数の言語版を制作しなければいけないパンフレットの制作について、InDesignServerを使って、Web上で作業を行うことで同時に複数の人が翻訳を行えると紹介、また翻訳について、一度でてきたフレーズを登録しておき、自動トランスレーションを行う自動翻訳ソリューションを紹介
今後はこういったWeb Top Publisingが増える、現在ではインターフェイスはFlashが使われるブラウザベースのものが多いが、今後はAdobe Airなどをつかった単独アプリケーションのものもでてくるだろう。先日おこなわれたDrupaでは多数の会社がWeb ベースアプリのソリューションを提供していたし。とのこと。
ティム氏から語られるInDesignの今後については...場末でちまちまと出力業務に従事している者からみると、はるか遠い先に感じる...。 いや、技術的にそれが可能であることは十分わかってるんですよ、ただ、現実の自分の仕事とはあまりにもかけ離れているので。 実際にこういうソリューションをやろうと思うと、開発費だけでかなりの費用がかかるからなぁ...それだけの開発費用をかけてペイできるほどの大きな仕事がないんだな。東京のほうだったら、そういう案件もあるんだろうけどね。開発その他がもっと簡単にできるようになれば敷居もひくくなるんだけど。たとえばFileMakerのWeb共有みたいに。
まぁこういった場で、あまり現実の話ばかりでもつまらないし、将来的なビジョンを見せるのは必要だから、そういう意味では「ああ、こんな風になっていくのねー(と、いうかこういう方向をAdobeはめざしているのね)」という感じ。
ちょっと未来
次に、ちょっと未来、のお話。次期バージョンInDesignCS4の機能紹介。
次期バージョンでは、印刷物から電子メディアへの書き出し機能を強化...ということで、InDesignのドキュメントにページをめくるアクションをつけてPDForSWFに書き出すという、ページトランザクション機能のデモ。
ボタンパレットから、簡単な動作でオブジェクトをボタン化でき、ボタンエフェクトを簡単につけることができるなどインタラクティブなドキュメントを簡単に作成できる。 また、作成したドキュメントからSWFへの書き出しをサポート、ディスプレイの解像度に応じて書き出すことができ、テキストデータはFlashテキスト、アウトライン、ラスタライズのいずれかで書き出される。
XFL(Adobe Flash CS4)書き出しというのも用意されている。 この形式で書き出すと、InDesignから書き出したファイルを直接Flashのオーサリングツールに読み込める(もしかしたら、InDesignから直接Flashを読み込めるようになる...かもね、というような発言があったような気がするのですが、これは私の聞き間違いかも)
ティム氏からの新機能紹介はここまで。 ほんとに、インタラクティブ、Web連携な部分の機能紹介しかなく、ペーパーメディア関係者である私は「InDesignよ...どこへ行く...」と思わずつぶやいてしまった。
その声が聞こえたわけではないでしょうが、この後、アドビジャパンの岩本氏より、InDesignは(データの作成において、最後の出力をしておわる)アンカーではなく、WebやPDFといった次のメディアへの橋渡しをするためのツールになるのだ、と説明がありました。
岩本氏からは、ペーパーメディア向けの新機能として、フォントのアウトライン化のメニューがいままでグラフィックス化となっていたのをアウトライン化という表記に改めましたという話(新機能ではないけど、これは去年のInDesignコンファレンスで会場でどちらがいいですかとアンケートとってたやつですね。ちゃんと要望がとどきましたよという報告で) 組版機能について、長文の英語に対する泣き別れ処理が可能になったと説明が。欧文の泣き別れ処理というのは、欧文組版では通常やらない処理だということですが、日本語+欧文ミックスの組版だと結構要望があるもんですよね。
残念ながらここで時間切れとなってしまい、スクリーンに映し出されているもう一つの変更については説明されませんでした。(見た限りでは...行末のスペースの扱いについてかな?) このセッションで紹介された機能で判断する限りでは、InDesign CS4ではFlashへの対応といった部分が大きな機能追加で、製版、印刷といった部分ではあまり目立った変化はないのかもしれません。
う〜ん、新機能紹介、もうちょっといろいろ見せて欲しかったな〜。コンファレンスに参加している人達だって、なによりそれを期待して見に来てるんだと思うし。 なにせ、このInDesignコンファレンス、有料セミナーなのだ。しかもチケット結構いいお値段...(いや高いと感じるか安いと感じるかは感じ方次第だけど) それなりに身銭をきっている参加者からすれば「払うた分だけ、見せてもらいまっせ」という気持ちになるのは当然。これだけのチラリズムじゃ、満足できまい。 とはいえ、発売までまだ半年もある現時点じゃ、ここまで見せるのだって出血大サービスよ、と踊り子(adobe)さんは言うかもしれない。
さて、InDesignコンファレンス、未来を紹介するセッションはここまで。 あとは現実のセッションへ。 長くなりそうなので、記事を分けます。