InDesignの段落スタイル徹底攻略(第182回 バンフーセミナーの再録)
InDesignの段落スタイル徹底攻略(詳細レジュメ)
2017年1月に開催された第182回 バンフーセミナー『InDesignの「段落スタイル」徹底攻略』を再構成してみました。
「自動適用(文字スタイル)」以降、手薄になっていますが、公開してみます。
目次
原則
- オーバーライドを残さない
- [基本段落]を使わない
- 自動適用を使って、文字スタイルを手動で適用する作業を極力減らす
段落スタイルと文字スタイルの関係
「文字パネル→文字スタイル、段落パネル→段落スタイル」ではない
基本は段落スタイル、例外箇所だけ文字スタイル
例えるなら…
- ものかのさん:段落スタイルは総合文字スタイル、文字スタイルは部分文字スタイル
- kinさん:段落スタイルは総入れ歯、文字スタイルは上に被せる銀歯
- ヒサノ@P5 さん:段落スタイルは文章スタイル、文字スタイルは例外文字スタイル
- kinさん:段落スタイルは1段落単位、文字スタイルは1文字単位
- webでは:段落スタイルはp要素(ブロックレベル要素)、文字スタイルはspan要素(インライン要素)
文字スタイルをメインに使わない理由
文字スタイルを中心に組んでいくのは、明らかな誤用。
- 文字スタイルには、行揃えを設定できない
- 文字スタイルを使ってスタイルを適用するには、対象となるすべての文字列を選択する必要がある(段落スタイルは、段落内にカーソルがあるだけで適用できる)
- 段落スタイルと文字スタイルの併用による「カスケード処理」(継承)というワザが可能(段落スタイルは重ねがけができない)
- 次のスタイル、オブジェクトスタイル、セルスタイルで段落スタイルを自動適用できる
箇条書き、先頭段落スタイル、正規表現スタイル、行スタイルにて、文字スタイルを自動適用できる
段落スタイル 文字スタイル - 次のスタイル
- オブジェクトスタイル
- セルスタイル
- 箇条書き
- 先頭文字スタイル
- 正規表現スタイル
- 行スタイル
段落スタイル(文字スタイル)の作成
- [段落スタイル]パネルの[新規スタイルを作成]ボタンをクリックする(ダイアログボックスは表示されず、「段落スタイル 1」、「段落スタイル 2」のようなスタイル名が作成される)
- その際、option+クリックすると、ダイアログボックスが表示される
次の理由から、後者(option+クリックでダイアログボックスを表示)を習慣付けるのが望ましい
- 段落スタイル名を付けていかないと、後で付けるのが面倒
- [選択範囲にスタイルを適用]オプションを利用できる
段落スタイル(文字スタイル)の作成時のポイント
選択しているテキストに登録したい書式情報を設定していると、その情報がスタイルに登録される
段落スタイル名
スタイル名に数字を入れて管理するとよい→スタイル名はソート(並び換え)できる
グループ管理をしておくとよい
ノンブル、柱などのページ設計に用いるものは普段使わないので、グループ化して隠してしまうとよい
Webと互換性のある段落名にするとよい
カテゴリ | 構造 | 要素名 | 番号 |
---|---|---|---|
段落 | 段落 | p | 0 |
見出し | 大見出し | h1 | 1 |
中見出し | h2 | 2 | |
小見出し | h3 | 3 | |
小小見出し | h4 | 4 | |
さらに下のレベル | h5 | 5 | |
〃 | h6 | 6 | |
リスト | 箇条書き | ul-li | 7 |
番号リスト | ol-li | 8 | |
定義リスト(用語) | dl-dt | 9 | |
定義リスト(説明) | dl-dd | 9 |
段落スタイルの適用
段落スタイルの対象は段落。適用したい段落内にカーソルがあれば、その段落全体に対して適用できる。文字列を選択しておく必要はない。
適用方法
段落スタイルを適用するには、次の3つの方法がある
- キーボードショートカット
- パネル上でクリック
- クイック適用
キーボードショートカット
使えるキーは、commandキー(Ctrlキー)、optionキー(Altキー)、shiftキーとテンキーパッド内の数字キー
Magic Keyboardなど、テンキーなしのキーボードには数字キーがないので、Karabinerで「Fn+Number to KeyPad」をオンにする →「Fnキーと1キーで、テンキーの1」のように動作する
Karabinerは、現在、macOS Sierra(10.12)には非対応
修飾キーのコンビネーション
次の7通りのコンビネーションがある(Macのcontrolキーは使えない)
- commandキーのみ
- command+shiftキー
- command+optionキー
- command+shift+optionキー
- shiftキーのみ
- option+shiftキー
- optionキーのみ
段落スタイル名に見出しレベルなどを設定し、キーボードショートカットの数字キーには、そのレベルの数字を合わせて設定するのが吉
原稿の流し込み時に不便なInDesignの段落スタイルの仕様
- 見出し1
- 本文
のように段落が並んでいて、最初の「本文」の段落を差し替えたいとき、「見出し1」の段落で4回クリックし(段落が選択される)、原稿をペーストすると、「見出し1」のスタイルが「本文」スタイルになってしまう
「見出し1」の段落で4回クリックしたとき、段落末尾の改段落記号(制御文字はPilcrow/ピルクロー/Pが左右反転した記号)まで選択されてしまうのが原因
解決策として、Yusuke S.さん作のスクリプトをダウンロードし、InDesign内でキーボードショートカットを設定の上、段落を選択するのがオススメ
複数スタイルの適用
- 複数の段落スタイル、複数の文字スタイルは、それぞれ同時に複数のスタイル適用することができない(CSSと異なる)
- 段落スタイルが適用されているテキストに、文字スタイルを適用することはできる
段落スタイルの編集
次の方法がある
- [段落スタイル]パネルで段落スタイル名をダブルクリックし、段落スタイルを編集するダイアログボックスを開いて編集する
- 段落スタイルが適用されている文字列を選択し、変更したい編集を加える。終了後、[段落スタイル]パネルのパネルメニューから[スタイルの再定義]をクリック(command+option+shift+Rキー、Ctrl+Alt+Shift+Rキー)
前者の場合、意図せず、適用したい段落以外にスタイルが適用されてしまうことがある。この場合、次のいずれを使う
- テキスト(フレーム)を非選択状態にしておく
- 段落スタイル名をcommand+option+shift+ダブルクリックする
スタイルの種類
InDesignには、次の5つのスタイルがある。メニューでは、あいうえお順に表示されている
- オブジェクトスタイル
- 段落スタイル
- セルスタイル
- 表スタイル
- 文字スタイル
次のように整理できる
- オブジェクトスタイルの対象は「フレーム」
- セルスタイルの対象は「セル」、表スタイルの対象は「表」
- オブジェクトスタイル、セルスタイルには、段落スタイルを連携することができる
- 文字スタイルは、ある意味、独立している
表スタイルについては、こちらのエントリーを参照
オーバーライド
段落スタイルを適用した後に手を加えると、段落スタイル名に「+」記号が付く。これを「オーバーライド」と呼ぶ(オーバーライトoverwriteでなく、override)
オーバーライドの解決方法
基本的にオーバーライドは残してはならない。次のいずれの方法によって解決する
- オーバーライドを消去([段落]パネルで段落スタイル名をoption+クリック)
- スタイルの再定義によって、段落スタイルにオーバーライド情報を上書きする
なお、[段落]パネルで[オーバーライドを消去]ボタンをクリックする際、2つのオプションがある
- command+クリック:文字のオーバーライドのみを消去
- command+shift+クリック:段落レベルのオーバーライドのみ消去
オーバーライドの探し方
オーバーライドは消しておくのが望ましい。次のように探すことができる
- オーバーライドハイライター(InDesign CC 2015以降)
- スクリプト(StyLighter)を使う(InDesignでオーバーライドされている箇所をマーキングしたり、段落スタイルごとにカラーリングする)
- プリフライトを使う(InDesignのプリフライト機能で文字スタイル/段落スタイルのオーバーライド箇所を見つける)
カスケード
段落スタイルは、ほかのスタイルを継承することができる
- 段落スタイルの場合、[基準]に指定した段落の影響を受ける
- 文字スタイルの場合、設定していない項目は、すべて親となる段落要素の影響を受ける
段落スタイルのカスケード
章ごとにカラーのみが変更されるような場合、基本となる段落スタイルをもとに、カラーバリエーションとなる段落スタイを展開するとき
[基準]に指定した段落スタイル(「h1_num」)が変更されると、その“子”は影響を受ける(例:フォント変更)
文字スタイルのカスケード
同様のことを文字スタイルとの組み合わせで実現することができる
この場合、文字スタイルには、特に設定は不要。段落スタイルに文字スタイルは併用できる
基本段落に注意
[段落スタイル]パネルには、「[基本段落]」というブラケット付きの段落スタイルが用意されている([文字スタイル]パネルの[なし]同様、消すことができない)
[基準]に[基本段落]を指定しないように注意したい
基本段落の設定を変更すると、[基本段落]を[基準]にしたスタイルすべてが影響を受けてしまう
自動適用(段落スタイル)
段落スタイルを自動適用するのに、3つのアプローチがある
- 次のスタイル
- オブジェクトスタイル
- セルスタイル
次のスタイル
次のスタイルは、段落スタイルの自動適用のキモ
段落スタイルに[次のスタイル]を適用することができる
次のようなフローが可能になる
- 改段落すると、[次のスタイル]に指定した段落スタイルが適用される
フレームを選択、または、すべてのテキストを選択し、[段落スタイル]パネル上で右クリックし、[(段落スタイル)を適用し、次のスタイルへ]をクリックすると、段落単位で次のスタイルが適用される
これによって、次のように互い違いにスタイルを適用したり、
順番にスタイルを適用していくことが可能
ただし、イレギュラーに段落数が増減するなどの場合には向かない
オブジェクトスタイル
オブジェクトスタイルに段落スタイルを指定することができる
これによって、フレームに対してオブジェクトスタイルを適用するだけで、段落スタイルが適用される
また、[次のスタイル]オプションを併用できる
自動適用(文字スタイル)
文字スタイルを手動で適用する作業を極力減らすための手法を習得しよう
- 箇条書き
- 先頭段落スタイル
- 正規表現スタイル
- 行スタイル
このほか、検索置換を使って、文字スタイル(段落スタイル)を適用する方法がある
先頭段落スタイルの使いどころ
正規表現スタイルの使いどころ
- 英数字のみ、[言語]を「英語」にすることでスペルチェックを可能にする
- スマルができないようにする(名もないテクノ手)
- インライングラフィックの前後のアキ調整を行う
- 金額(数字+「円」)のみ、異なる書式にする
- インタビュー記事で人名の書式を指定する
- 特定の文字列に、自作アイコンフォントを自動的に適用する
行スタイルの使いどころ
英語版での名称
調べ物をするとき、英語版での名称を知っておくと役立つ
日本語版 | 英語版 |
---|---|
[基準] | [Basic Paragraph] |
次のスタイル | Next Style |
箇条書き | Numbering |
先頭文字スタイル | nested styles |
正規表現スタイル | GREP styles |
行スタイル | Nested Line Style |
段落前のアキ | Space Before |
段落後のアキ | Space After |
段落境界線(前) | Paragraph Rules (Rule Above) |
段落背景色 | Paragraph Shades |
段落境界線(後) | Paragraph Rules (Rule Below) |