アイコンを正規表現スタイルで
外国語の学参モノをやっていると、品詞を表すアイコンみたいなものがたくさんでてきたりします。
形が真四角だったらやりようはいろいろあるんですが、それが角丸だったりすると、途端に面倒なものになりますね。そういうとき、皆さんはどのように処理しているでしょうか。
アンカー付きオブジェクトとしてインラインで入れていくのがもっとも簡単な方法だと思いますが、数がたくさんある場合は現実的はありません。
角丸グリフにルビ、というのも選択肢の1つでしょう。ただこれも、修正時にルビダイアログを出さないといけないという煩わしさと、ひとつずつ文字スタイルを当てないといけない(タグ付きテキストにしないといけない)、正規表現スタイルで実現できない、というのが面倒かなと考えます。
ここは別の角度から考えて、フォントを自作してしまいましょう。
入稿テキストを使ってページを組んでいくときに、フォントが作れる環境を持っていて、それを利用できるかどうかは、その後の作業を、ミスなく、手早くこなしていく上でわりと重要なことだったりします。
ただ、単純にフォントを自作したところで、そこに「文字スタイルを当てていく」という作業は発生してしまいます。もしくは、もっと面倒(だと思われがち)な、タグ付きテキストとして処理する必要が出てくるかもしれません。
ここで紹介する方法は、テキストをタグ付きにする必要はありませんし、入稿テキストさえちゃんとしておいてもらえば、あとは簡単な検索置換と、InDesignでの正規表現スタイルで簡単に実現できてしまうものです。
前準備
アイコンの表記は、入稿テキストの中では、名詞=【名】、形容詞=【形】としてもらっていると仮定します。このくらいなら、編集部のほうで準備してもらうことは十分に可能でしょう。
まずはテキストの処理から。テキスト上では、アイコンを大文字アルファベットに置き換えて表すことにします。【名】を{A}、【形】を{B}とします。必ずしも置き換える必要はないのですが、このあとのフォント作成や、InDesignに移ってからの作業を考えて、入力の簡単なアルファベットや数字などにしておきます。
また、【 】も{ }に置き換えていますが、これもフォント作成の作業を考えてのこと。フォント作成アプリでの設定はできるだけ触らずに、簡単確実に扱えるグリフに置き換えておきます。また、流し込み後の禁則のことなども考えて、対(つい)の約物への割り当てをオススメします。入稿前からそう決めているのなら、始めからそういう形で編集部に依頼しておくのでもいいですね。お互い負担とならない程度に。
フォントの作成
ここでは、Mac OS X版のFontographer 5を使用しています。アウトラインデータはIllustratorで作成します。アウトラインをFontographerのグリフエリアにコピーアンドペーストします。どのアイコンをどのグリフに割り当てるかは、上記でテキスト処理したものに倣います。ここでは名詞アイコンをAに、形容詞アイコンをBに割り当てています。
グリフは、1000em(全角幅)となっています。テキストデータで、アイコンは{A}のように表記されているので、このままの状態でフォントを作成しても、正規表現スタイルを使ったところで目標の形にはなりません。
重要なポイントは、{ }それぞれのグリフの文字幅を0(ゼロ)にすること。こうすることで、{A}の文字列が、フォントの適用によって全角幅のアイコンとして機能します。ただ、幅をゼロにすると、流し込み後に文字が選択しづらい状況が発生するかもしれません。それを避けるために、{=250em、}=250em、間のアルファベット=500em という設定値にしてもいいでしょう。要は3グリフの合計がぴったり1000em(全角幅)になるようにするということです。もちろん、正方形のアイコンでない場合は、その限りではありません。
ここまでできたら、フォントを書き出します。なお、フォント作りの基礎についてはここでは書きません。守るべきルールがあるので、それについては各々が調べておいてください。
InDesignでの設定
InDesignに移り、アイコン用の文字スタイルと、アイコンが出現する段落の、段落スタイルを作成します。
段落スタイル内の正規表現スタイルで、次のように設定します。
大文字のAからZまでのいずれかが{ }で囲まれている場合、[品詞アイコン]という文字スタイルを適用しなさい
という意味ですね。
スタイルの適用
では、テキストを流して、そこに段落スタイルを適用してみましょう。どうでしょう、目標の形になったでしょうか。3つのグリフで1つのアイコンを実現しているのですが、3グリフの文字幅の合計値が1000emになっているので、見た目は全角となっています。
たしかにフォントを作らないといけないという作業がありますが、始めに時間を掛けてあとは楽々進めるのか、それとも始めから終わりまで面倒な作業をずるずると続けるのか。
DTPには他にも多くの要素を含んでいますから、フォントを作ることでその後の作業が効率よく進められるかどうか、それをよく考えて試してみていただければと思います。
文字好き界隈で話題の「Glyphs mini」など、安価にフォントを作成するツールがあります。ちょっとした工夫でDTP作業が劇的に快適になることもありますので、何らかのフォント作成アプリをひとつ持っておくことをオススメします。
まぁ、このエントリーでは、「アイコンがフォント化できる」ということが前提なんですけどね。
おまけ(蛇足)
来年、サッカーワールドカップが開催されるブラジルのこの国旗。これは実はフォントで再現されています。これが実用的かどうかはさておき、よほど込み入った絵画的なものでない限り、フォント化することは可能だと思います。